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最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)105号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人西村浩、内海静雄の上告趣意書第二點は「原審はその法律の擬律に際りて次の如き記載あり「法律に照すと被告人の判示所爲中第一の(イ)の點は刑法第二百三十五條第六十條に第一の(ロ)の點は同法第二百三十六條第一項第六十條に第二の點は同法第二百五十六條第二項に當るから右の第一の(ロ)の點については被告人は犯行當時窃盜の犯意しか持って居らず共犯者である判示岡本等の強盜の行爲は被告人の豫期しないところであったから」なる記載の如く第一の(ロ)の事実について原審判決は刑法第二百三十六條第一項第六十條を適用せるも右は全く法律の適用を誤りたるものにして上告人の所爲に對しては刑法第二百三十五條の窃盜罪を適用すべきものなるにかゝはらず右の如く誤りて強盜罪の法條を適用せるものなり」というにある。

然し原判決の法律適用の部分を見るとその最初の所に「第一の(ロ)の點は刑法第二百三十六條第一項第六十條に當るが」とあるが結局は刑法第三十八條第二項により窃盜罪として同法第二百三十五條を適用し判示第一の(イ)と連續犯をなすものとして處分するものであることは判文上明白であって右最初の記載は要するに「生じた結果の點からすれば本來は刑法第二百三十六條第一項第六十條に當るべき場合なのであるが」と云う意味に過ぎないので同法條を適用した趣旨でないことは疑を容れない、而して判示第一の(ロ)について被告人以外の共犯者は最初から強盜の意思で強盜の結果を実現したのであるがただ被告人だけは輕い窃盜の意思で他の共犯者の勧誘に應じて屋外で見張をしたと云うのであるから被告人は輕い窃盜の犯意で重い強盜の結果を発生させたものであるが共犯者の強盜所爲は被告人の豫期しないところであるからこの共犯者の強盜行爲について被告人に強盜の責任を問うことはできない譯である、然らば原判決が被告人に對し刑法第三十八條第二項により窃盜罪として處斷したのは正當であって原判決には毫も所論の如き擬律錯誤の違法はない、論旨は理由なきものである。(その他の上告論旨及び判決理由は省略する。)

よって本件上告は理由がないから刑事訴訟法第四百四十六條により主文の如く判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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